「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020」について
「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020」について
日本臨床救急医学会
蘇生ガイドライン2020検討委員会
委員長 真弓俊彦
バイスタンダーサポート検討小委員会
委員長 石井史子
応急手当を市民が行う事によって何らかのストレスを受ける可能性があるにも関わらず、社会の認識は少なく公的なサポートは殆どない現状があります。このような現状を踏まえ、当委員会より、応急手当に関わったすべての市民に何らかの心的ストレスが生じる可能性があることを社会に周知し、バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートするために、「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020」を添付のとおり公表します。
本提言は、同様の目的で2015年に公表した「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提案」に引き続いて行うものです。
提言作成の経緯、提言内容の概要は、次のとおりです。詳細は、スライド形式の資料をご参照ください。
バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020
----------------------------------
「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020」の概要
(提言作成の経緯など)
• 応急手当を市民が行う事によって何らかのストレスを受ける可能性があるにも関わらず、社会の認識は少なく公的なサポートは殆どない現状があった。
• 当委員会ではこのような現状を踏まえ、応急手当に関わったすべての市民に何らかの心的ストレスが生じる可能性があることを社会に周知し、バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートするために「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提案」を2015年に公開した。
• 当委員会からの提案によりJRC蘇生ガイドライン2015にバイスタンダーの精神的な有害事象に関する記載がなされた。
• その結果として「救急蘇生法の指針2015」はじめ蘇生に関わる消防や日赤などの各種テキストにも引用された。
• それを受けて公的なサポート対策も少しずつ進んできたがまだ十分とは言い難い。
• 5年経過したので現在までにできた事、できていない事を含めて新たに提言を行う。
• 市民が緊急事案に遭遇した際に、何らかの有害事象を危惧することにより、心肺蘇生実施の障壁となる可能性がある。またそのことにより、社会復帰率が低下することも懸念される。
• 本委員会は、エキスパートコンセンサス、すなわち有識者の合意形成というプロセスにより、バイスタンダーのサポートに関する提言を行う。
• JRC蘇生ガイドライン2020に本提言の骨子が採用されることを目指す。
(提言の内容)
• 全ての応急手当実施者(バイスタンダー)は身体的・精神的・社会的に保護される必要がある。
• 応急手当実施者が保護されることは、応急手当実施における障壁の軽減につながり、救える命を救うことにつながっていく。
• 市民にとって応急手当に関わることは非日常の体験であり、多かれ少なかれ心的ストレスが生じ、何らかの影響が起こりうる。そのほとんどは問題なく時間とともに軽減するが、特別な対応が必要な人も存在する。このことを社会の共通認識にし、社会全体でサポートする必要がある。
• 消防・医療機関・行政・保健所など地域社会全体で、下記のようなバイスタンダーサポート体制を構築する。
•応急手当講習会、学校や自動車学校での救命教育では、応急手当実施時に心的ストレスが発生することを伝える
•口頭指導時における心的ストレスに対する配慮
•応急手当時の感謝カード配付
•地域毎のサポート窓口の設置(消防本部、保健所、医療機関など)とと もにサポート体制があることを周知する
•バイスタンダー保険の導入
•ストレスチェックリストの活用
• 県や地域のメディカルコントロールが主導することも必要
• 中学校・高等学校での心肺蘇生や応急手当といった救命教育の普及など、市民が応急手当を行う事が当たり前の土壌づくりを推進していく必要がある。
• 社会でサポート体制を構築することに加え、法的にも保護できるような法制の検討が必要である。民法第698条「緊急事務管理」、刑法第37条「緊急避難」で免責できるという考えもあるが、諸外国における「善きサマリア人の法」のような応急手当実施者を守るための法整備の検討が望まれる。