【周知依頼】「バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートする体制構築に係る提言2025」について
「バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートする体制構築に係る提言2025」について
日本臨床救急医学会
バイスタンダー体制検討委員会
委員長 名知 祥
応急手当を市民が行う事によって何らかのストレスを受ける可能性があり、何らかの有害事象を危惧することで応急手当の実施の障壁となる可能性があるにも関わらず、社会の認識は少なく公的なサポートは殆どない現状があります。このような現状を踏まえ、当委員会では、応急手当に関わったすべての市民(バイスタンダー)に何らかの心的ストレスが生じる可能性があることを社会に周知し、バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートするために、「バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートする体制構築に係る提言2025」を添付のとおり公表します。
本提言は、同様の目的で2015年に公表した「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提案」、2020年に公表した「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提言2020」に引き続いて行うものです。
提言作成の経緯、提言内容の概要は、次のとおりです。詳細は、スライド形式の資料をご参照ください。
バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートする体制構築に係る提言2025
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「バイスタンダーの心的ストレス反応等をサポートする体制構築に係る提言2025」概要
(提言作成の経緯など)
・応急手当を市民が行う事によって何らかのストレスを受ける可能性があるにも関わらず、社会の認識は少なく公的なサポートは殆どない現状があった。
・当委員会ではこのような現状を踏まえ、応急手当に関わったすべての市民に何らかの心的ストレスが生じる可能性があることを社会に周知し、バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートするために「バイスタンダーとして活動した市民の心的ストレス反応をサポートする体制構築に係る提案」を2015年に公開した。
・当委員会からの提案により「JRC蘇生ガイドライン2015」にバイスタンダーの精神的な有害事象に関する記載がなされ、「救急蘇生法の指針2015」はじめ、蘇生に関わる消防や日赤などの各種テキストにも引用された。
・2020年にも提言を発表し、公的なサポート対策も少しずつ進んできたがまだ十分とは言い難い。
・2025年3月現在までにできた事、できていない事を含めて新たに提言を行う。
・バイスタンダーが緊急事案に遭遇した際、何らかの有害事象を危惧することにより、心肺蘇生を含めた応急手当実施の障壁となる可能性がある。またそのことにより、社会復帰率が低下することも懸念される。
・当委員会は、エキスパートコンセンサス、すなわち有識者の合意形成というプロセスにより、バイスタンダーのサポートに関する提言を行う。
・JRC蘇生ガイドライン2025に本提言の骨子が採用され、バイスタンダーサポート体制が社会に浸透することを目指す。
(提言の内容)
・全ての応急手当実施者(バイスタンダー)は身体的・精神的・社会的に保護される必要がある。
・バイスタンダーが保護されることは、応急手当実施における障壁の軽減につながり、救える命を救うことにつながっていく。
・市民にとって応急手当に関わることは非日常の体験であり、多かれ少なかれ心的ストレスが生じ、何らかの影響が起こりうる。そのほとんどは問題なく時間とともに軽減するが、特別な対応が必要な人も存在する。このことを社会の共通認識にし、社会全体でサポートする必要がある。
・消防・医療機関・行政・保健所など地域社会全体で、下記のようなバイスタンダーサポート体制を構築する必要がある。
▷県/地域MC協議会がサポート体制の構築を主導する
▷応急手当講習会や学校等での救命教育では、応急手当実施時に心的ストレスが生じうることを伝える
▷口頭指導時に心的ストレスに対して配慮する
▷応急手当時にバイスタンダーへ感謝カードを配付する
▷地域毎のサポート窓口の設置(消防本部、保健所、医療機関など)とともにサポート体制があることを周知する
▷バイスタンダー保険を導入する
▷ストレスチェックリストを活用する
・中学校・高等学校だけでなく、小学校での救命教育(心肺蘇生や応急手当教育)の普及や、市民が応急手当を行う事が当たり前の土壌づくりを推進していく必要がある。
・バイスタンダーの法的な保護について、現行の民法・刑法で免責できると考えられている。
・しかし、心停止が疑われる女性傷病者を救護することへの躊躇などを考えると、海外における「善きサマリア人の法」のようなバイスタンダーを守るための法整備が必要と考える。