学校へのBLS教育導入に関する検討委員会
「いのちの教育」の提言

はじめに

bls2人は、健康でかつ安全に暮らすという根源的欲求を有し、災害、外傷、急性の病気に絶えず怯えてきた。救急医療は医の原点といわれ、耐え難い苦痛や生命の危機が迫っている人に対する緊急の診断・治療を行うことから、人の生命保持の最終的なよりどころと位置付けられている。救急医療は、主に医療機関内の医師により行われている。しかし、ほとんどのけがや病気は、医療機関以外の場所で発生し、その場に居合わせた人(以下「バイスタンダー」という。)の多くは医師ではなく一般の市民である。バイスタンダーは救急現場から医療機関に至るまでの間の救護の一翼を担い、そこでの応急処置は救急医療を必要とする人の予後を大きく左右すると言っても過言ではない。そのため一人でも多くにバイスタンダーを育成し、正しい心肺蘇生や応急手当を身につけ、速やかに救護の手をさしのばす心を育むことが大切である。

 

日本臨床救急医学会が提言する「いのちの教育」とは

人の生命を助けるという行動は「人」のみが行える崇高な行為である。この崇高な行為を心肺蘇生教育として、学校教育に導入するのが日本臨床救急医学会から提言する「(命)の教育」である。

2006年以来、小・中・高校においてパイロット的に実施された「学校へのいのちの教育:救急版」はすでに5000人以上の子供たちが受講しAEDや心肺蘇生の手技の確実な取得のみならず、命の重要性や人の為にすすんで処置できる協調性を身につけることが出来たと報告されている。これを更に発展させ我々は小学生、中学生の義務教育、さらに高校生、大学生に学校内で「命の重要性と命を助ける方法」を学ぶ事で人を思いやる気持ちを育むことが可能と考えている。

「いのちの教育」によって得られる効果

「いのち(命)の教育」は、日本を背負ってたつ子どもたちが人の命を大事にし、国民のすべてが互いに傷ついたときには支えあう国になることを目指している。学校へのAEDを含む心肺蘇生教育によって得られる効果は以下の通りである。命を助ける行動を学ぶことで命を大事にすることや人を思いやる心を育むことができる
学校内外で発生する小児期の外因性死亡を減らすことは、1人でも多くの子供が成人し、社会に供することができる。少子化のすすむ日本では重要である。
将来、日本を背負ってたつ人のすべてがAEDを含む心肺蘇生、応急手当てができる国を構築できる

心肺蘇生の普及と現状

市民による応急手当実施率は年々増加してきており、とくに平成16年7月にAEDの使用が市民に認められて以来、市民の関心が高まりAEDの普及と共に心肺蘇生についても一段と普及が進んでいる。日本におけるこれまでの心肺蘇生の普及については、救急に関連する学会のみならず、関係省庁、地方自治体、消防機関、日本赤十字社、または民間団体などがさまざまな献身的な活動のもと取り組まれてきた。しかし、総務省消防庁の報告をみると、いまだ心停止患者に直面すると、バイスタンダーによる心肺蘇生実施率は決して高くない(48.8%)。年間11万人を超える心肺停止患者のうち、突然の心原性心停止は約7万人近くおり、これらの心臓突然死をいかに救命するかが喫緊の課題である。

一方、AEDは全国で52万台以上も設置され救命事例も多く報告されるようになってきた。平成26年に市民によりAEDが使用された数は1664件、うち、除細動が実施されたのは1030件であった(平成27年度版救急救助の現況)。このようにAEDの普及にともない心肺蘇生自体も普及が進んでおり、牽引車の役割をなしているといえる。

これまでの心肺蘇生講習会は、希望する者へ、180分という時間で実施されてきた。しかし、2015年日本版蘇生ガイドラインにも謳われているように、今後、市民への心肺蘇生講習はより、分かりやすく、短時間で、効果的に行うため、様々なアプローチを行っていくべきであり、あらゆる年齢層にも、理解されやすいことが求められている。

すなわち、全国の学校で、教育の一環として心肺蘇生をとらえ、学校のカリキュラムに合わせ、子どもの理解度に合わせた内容の心肺蘇生を普及することは、国民全体へ心肺蘇生の普及の裾野を広げることになり、いっそうの心肺蘇生普及に役立つものと思われる。